相続入門 (第4回) — 「相続放棄 (その1)」

前回は、相続の仕方について簡単にご説明しましたが、今回からは相続放棄について何回かに分けてご説明します。

1.相続放棄について

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に相続放棄を申し立てることによって最初から相続人でなかったことになる制度です。

2.相続放棄の申立手続について

相続放棄を家庭裁判所に申し立てることを相続放棄の申述といいます。

①申述人(申述ができる人)
相続人
(1)相続人が未成年者または成年被後見人である場合には、その法定代理人が代理して申述します。
(2)未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには、当該未成年者について特別代理人の選任が必要です。

②申述時期(申立期間)
自己のために相続開始があったことを知ってから3か月以内。3か月間は熟慮期間とされています。
(1)熟慮期間は被相続人が死亡してから3か月ではありません。
(2)熟慮期間進行の起算点
・熟慮期間は、原則として相続人が相続開始の原因となる事実及び自己が相続人となったことを知ったときから進行するというのが判例です。
・したがって、被相続人が死亡した事実を知っていても、自己が相続人であることを知らなければ、自己のために相続開始があったことを知った時には該当しません。
・相続人が複数いる場合には、各相続人毎に熟慮期間が進行します。

③申述先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

④熟慮期間の3か月を経過しそうなとき
(1)相続の承認・放棄の期間伸長の審判を申し立てます。
(2)申立先は被相続人の最後の住所の家庭裁判所です。


相続入門 (第3回) — 「相続の仕方」

こんにちは。司法書士の砂川知明です。

今回は、「相続の仕方」です。

相続の仕方には、大きく分けて以下の3つがあります。

1.単純承認
2.限定承認
3.相続放棄

この3つについて簡単にご説明します。

1.単純承認
①被相続人(亡くなった方)の財産を、プラスの財産(資産)やマイナスの財産(借金)を含めて全て承継することです。

②単純承認する場合には特段の手続きは必要ありません。

③相続人が相続財産を使ったりするとその相続人は単純承認したものとみなされますので、被相続人に借金があるかどうか分からないときなどにおいて、相続財産に手をつ  ける際には注意が必要です。

④遺産分割協議によって財産を相続しないと定めた人について、3の相続放棄と混同する方がいらっしゃいますが、例え遺産分割協議によって財産(資産)を一切相続しな  かったとしても、被相続人に借金があった場合にはその借金を相続する可能性があります。被相続人に借金があるかどうか分からないときは、安易に遺産分割協議をするのではなく、相続放棄を検討することも必要です。

2.限定承認
①相続財産で得たプラスの財産(資産)よりマイナスの財産(借金)が上回る場合、相続で得た資産の限度で借金を払い、後は払わなくてもよいという制度です。

②この制度のポイント
(1)相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要がある。
(2)全ての相続人が一致共同して申立しなければならない。
(3)相続財産を使ったり隠したりしたら使うことができない。

3.相続放棄
①相続を放棄すると最初から相続人ではないことになります。当然にプラスの財産もマイナスの財産も含め一切の財産を承継しません。

②この制度のポイント
(1)相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる。
(2)各相続人が単独で申し立てることができる。
(3)期間伸長の手続きをすれば3か月を超えても放棄は可能
(4)相続財産を使ったり隠したりしたら使うことができない。
(5)放棄した相続人の子は代襲相続できない。
(6)相続放棄は生前にできない。

③相続人であることを知った時とは、相続が発生した時(死亡時)とは必ずしも一致するものではないので、死亡してから3か月を経過していても相続放棄を申し立てるこ  とができないものではありません。

④相続放棄すると最初から相続人でなかったことになります。従って、もし子が全員相続放棄した場合には、相続人の順位が繰り上がり、次順位の直系尊属(父母等)が相  続人になることがありますので注意が必要です。