相続トピックス:相続税の取扱いが変わります

平成27年1月1日以降の相続に関しては、相続税の取り扱いが大きく変わります。

改正のポイント

1.遺産に係る基礎控除額が引き下げられます。

相続税は、遺産額から基礎控除額を引いて計算しますが、平成27年からの相続から、基礎控除額が以下の通り引き下げられます。

改正前
5000万円+(1000万円×法定相続人の数)

改正後
3000万円+(1000万円×法定相続人の数)

例)法定相続人が、配偶者と子2人の場合

改正前 基礎控除額 8000万円

改正後 基礎控除額 4800万円

2.相続税の税率構造が変わります。

最高税率の引き上げ(50%⇒55%:取得金額6億円超の場合)など、税率構造が変わります。

3.小規模宅地等の特例が変わります。

①居住用の宅地等(特定居住用宅地等)の限度面積が拡大されます。

改正前 限度面積240㎡(減額割合 80%)

改正後 限度面積330㎡(減額割合 80%)

②特定居住用宅地等と特定事業用等宅地等の重複適用が可能になります。

改正前 特定居住用宅地等  240㎡    合計400㎡
特定事業用等宅地等 400㎡    まで適用可能

改正前 特定居住用宅地等  330㎡    合計730㎡
特定事業用等宅地等 400㎡    まで適用可能

相続税の改正にともない相続に関するご相談が非常に増えております。砂川司法書士事務所では、相続に関するお客様の不安を解消すべく、提携税理士などと連携しながらご相談に応じております。相談は何度でも無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください(なお、個別具体的な税務相談を行う場合は、所定の税理士報酬が発生する場合があります。その際には、事前に費用についてご案内いたします。)

 


相続入門 (第5回) — 「相続放棄 (その2)」

前回に引き続き、相続放棄についてです。

「相続放棄の効果」について、説明します。

相続を放棄すると、放棄した人は、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます。そうすると代襲相続も発生しませんので、たとえば、被相続人の子供が相続放棄をしたとして、相続放棄した子供の子供(すなわち孫)が相続人になるようなことはありません。

わかりやすく図にすると次のとおりです。

family

例えば、父Aが多額の借金を残して死亡した場合、その子Cが父Aの相続を放棄したとします。子Cが相続を放棄した場合に、孫Dが子Cを代襲して父Aの相続人になるかというとそうではありません。
子Cが相続放棄をしても、孫DはAの相続人にはならないのです。

そうすると、子Cが父Aの相続を放棄した場合、父Aの相続人は誰になるのでしょうか。

相続人となる人及び順位は、民法で定められています。
代襲相続・欠格事由などの細かい点は省略すると、概略は以下のとおりです。

配偶者は常に相続人になります。

配偶者以外の相続人は、次の順位に従って相続人になります。
第1順位 子
第2順位 直系尊属(父・母・祖父・祖母など)
第3順位 兄弟姉妹

先順位の人がいない場合、次順位の人が相続人となります。

設例の場合で言うと、第1順位の子Cが相続放棄をすることにより、第1順位の人がいなくなるので、次順位(第2順位)の人、つまりAの直系尊属(父・母・祖父・祖母など)が相続人になります。もし、Aの直系尊属が死亡する等により全ていない場合には、その次の順位(第3順位)の人、つまりAの兄弟姉妹が相続人になります。


相続入門 (第4回) — 「相続放棄 (その1)」

前回は、相続の仕方について簡単にご説明しましたが、今回からは相続放棄について何回かに分けてご説明します。

1.相続放棄について

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に相続放棄を申し立てることによって最初から相続人でなかったことになる制度です。

2.相続放棄の申立手続について

相続放棄を家庭裁判所に申し立てることを相続放棄の申述といいます。

①申述人(申述ができる人)
相続人
(1)相続人が未成年者または成年被後見人である場合には、その法定代理人が代理して申述します。
(2)未成年者と法定代理人が共同相続人であって未成年者のみが申述するとき(法定代理人が先に申述している場合を除く。)又は複数の未成年者の法定代理人が一部の未成年者を代理して申述するときには、当該未成年者について特別代理人の選任が必要です。

②申述時期(申立期間)
自己のために相続開始があったことを知ってから3か月以内。3か月間は熟慮期間とされています。
(1)熟慮期間は被相続人が死亡してから3か月ではありません。
(2)熟慮期間進行の起算点
・熟慮期間は、原則として相続人が相続開始の原因となる事実及び自己が相続人となったことを知ったときから進行するというのが判例です。
・したがって、被相続人が死亡した事実を知っていても、自己が相続人であることを知らなければ、自己のために相続開始があったことを知った時には該当しません。
・相続人が複数いる場合には、各相続人毎に熟慮期間が進行します。

③申述先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

④熟慮期間の3か月を経過しそうなとき
(1)相続の承認・放棄の期間伸長の審判を申し立てます。
(2)申立先は被相続人の最後の住所の家庭裁判所です。


相続入門 (第3回) — 「相続の仕方」

こんにちは。司法書士の砂川知明です。

今回は、「相続の仕方」です。

相続の仕方には、大きく分けて以下の3つがあります。

1.単純承認
2.限定承認
3.相続放棄

この3つについて簡単にご説明します。

1.単純承認
①被相続人(亡くなった方)の財産を、プラスの財産(資産)やマイナスの財産(借金)を含めて全て承継することです。

②単純承認する場合には特段の手続きは必要ありません。

③相続人が相続財産を使ったりするとその相続人は単純承認したものとみなされますので、被相続人に借金があるかどうか分からないときなどにおいて、相続財産に手をつ  ける際には注意が必要です。

④遺産分割協議によって財産を相続しないと定めた人について、3の相続放棄と混同する方がいらっしゃいますが、例え遺産分割協議によって財産(資産)を一切相続しな  かったとしても、被相続人に借金があった場合にはその借金を相続する可能性があります。被相続人に借金があるかどうか分からないときは、安易に遺産分割協議をするのではなく、相続放棄を検討することも必要です。

2.限定承認
①相続財産で得たプラスの財産(資産)よりマイナスの財産(借金)が上回る場合、相続で得た資産の限度で借金を払い、後は払わなくてもよいという制度です。

②この制度のポイント
(1)相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要がある。
(2)全ての相続人が一致共同して申立しなければならない。
(3)相続財産を使ったり隠したりしたら使うことができない。

3.相続放棄
①相続を放棄すると最初から相続人ではないことになります。当然にプラスの財産もマイナスの財産も含め一切の財産を承継しません。

②この制度のポイント
(1)相続人であることを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる。
(2)各相続人が単独で申し立てることができる。
(3)期間伸長の手続きをすれば3か月を超えても放棄は可能
(4)相続財産を使ったり隠したりしたら使うことができない。
(5)放棄した相続人の子は代襲相続できない。
(6)相続放棄は生前にできない。

③相続人であることを知った時とは、相続が発生した時(死亡時)とは必ずしも一致するものではないので、死亡してから3か月を経過していても相続放棄を申し立てるこ  とができないものではありません。

④相続放棄すると最初から相続人でなかったことになります。従って、もし子が全員相続放棄した場合には、相続人の順位が繰り上がり、次順位の直系尊属(父母等)が相  続人になることがありますので注意が必要です。


相続入門 (第2回) — 「相続人と相続割合について」

こんにちは。司法書士の砂川知明です。

ちょっと間があいてしまいましたが、「相続」についての基本的なご説明を続けます。

今回は、「相続人と相続割合について」です。

相続が発生したら、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産(資産・負債)を相続することになるのですが、そもそも誰が相続人になり、相続割合はどうなるのでしょうか。

実は、被相続人が亡くなった時期によって相続人になる人及び相続割合が異なるのです。

ポイント:相続が発生した(亡くなった)時期によって、相続人及び相続割合が異なる。
⇒相続は発生した時点の法律がさかのぼって適用される。

具体的には以下のとおりです。

1.家督相続:(明治31年7月16日から昭和22年5月2日の間に発生した相続)
⇒原則、戸主に相続が発生した場合長子が単独で相続します(家督相続)。

2.応急措置法:(昭和22年5月3日から昭和22年12月31日の間に発生した相続)
⇒家督相続規定が廃止され、配偶者が常に相続人となることになりました。
相続割合は下記のとおりです。
①直系卑属(子、孫等)と配偶者が相続人の場合 直系卑属 2/3 配偶者 1/3
②直系尊属(父母・祖父母等)と配偶者が相続人の場合 直系尊属1/2 配偶者 1/2
③兄弟姉妹と配偶者が相続人が相続人の場合 兄弟姉妹 1/3 配偶者 2/3
※兄弟姉妹の直系卑属には代襲相続権はありません。
※非嫡出子は嫡出子の1/2、兄弟姉妹は全血半血による相続分の相違はありません。

3.現行民法旧持分(昭和23年1月1日から昭和55年12月31日の間に発生した相続)
⇒相続割合は2の応急措置法と同じです。
※兄弟姉妹の直系卑属に代襲相続権あり。
※非嫡出子は嫡出子の1/2、半血兄弟姉妹は全血兄弟姉妹の1/2

4.現行民法新持分(昭和56年1月1日以降に発生した相続
⇒相続割合は下記のとおりです。
①直系卑属(子、孫等)と配偶者が相続人の場合 直系卑属 1/2 配偶者 1/2
②直系尊属(父母・祖父母等)と配偶者が相続人の場合 直系尊属1/3 配偶者 2/3
③兄弟姉妹と配偶者が相続人が相続人の場合 兄弟姉妹 1/4 配偶者 3/4
※兄弟姉妹の直系卑属は被相続人の甥姪についてのみ代襲相続権あり
※非嫡出子は嫡出子の1/2(民法改正により平成25年9月5日以降に発生した相続については非嫡出子と嫡出子の相続分は同等となりました)

まとめ
ポイントで述べたように、相続が発生した時期により相続人及び相続割合が異なることから、長期間相続手続きをしていなかった場合には、相続が発生した時点において適用される法律が現行法と異なる可能性がありますので注意が必要です。


相続入門 (第1回) — 「相続の開始について」

こんにちは。司法書士の砂川知明です。

「親が亡くなったけど、相続に関してよくわからない・・・、何から始めたらよいか分からない・・・」 という方はとても多いのではないでしょうか。

「相続」は誰にでも発生する問題ですが、「相続」に関する知識がなく、実際に「相続」が発生してから慌てて調べるという方が多いのも事実です。

これからこのブログで、「相続」についてわかりやすくご説明をさせていただきます。

今日は、その第1回目。「相続の開始について」です。

「相続は、死亡によって開始する。」(民法第882条)
人が産まれる場所や時間がそれぞれ異なるように、人が生涯を終えるときも場所や時間が異なります。
全ての人が病院で誰かに見守られながら亡くなるのではないことから、法律においては、さまざまなケースを想定して、相続の開始について規定しています。

さて、前述のとおり、相続は死亡によって開始するのですが、「死亡」について民法では大きく3つのケースに分けて次のとおり規定しています。
①亡くなったとき
②不在者の生死が7年以上明らかでないとき
③事故にあって所在や生死が分からないとき

①の「亡くなったとき」とは、文字通り死亡の事実が発生したときです。同居の親族等の届出義務者は、死亡の事実を知った日から原則として7日以内に、死亡者の本籍地等に届け出なければならないとされています。
死亡届には、所定の事項を記載したうえで、死亡診断書または死体検案書を添付しなければなりません。また、やむを得ない事由によって死亡診断書または死体検案書を添付することができない場合は、死亡の事実を証する書面をもってこれに代えることができます。

②の「不在者の生死が7年以上明らかでないとき」とは、失踪などにより不在となった人の生死が7年以上不明である状況が続いている場合のときです。

この場合、家庭裁判所は利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます。そして、失踪宣告を受けた不在者は、7年の失踪期間の満了の時に、死亡したものとみなされます。7年間の起算点は、不在者の生存が認められた最後の時点であり、その翌日から起算して満7年間が失踪期間となります。
失踪宣告の申し立ては、不在者の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に対し行います。家庭裁判所は、公示催告期間(普通失踪の場合は、6か月以上)を定めて、公示催告をなし、事実の調査等をした上で、審判で宣告をすることになります。

③の「事故にあって所在や生死が分からないとき」とは、特に死亡の可能性の高い危難に遭遇した場合、すなわち、戦地に臨んだ者、沈没した船舶に在った者、その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後、又は、その他の危難が去った後、1年間明らかでない場合のときです。

この場合、家庭裁判所は利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができます。そして、失踪宣告を受けた不在者は、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
失踪宣告の申し立ては、不在者の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に対し行います。家庭裁判所は、公示催告期間(危難失踪の場合は、2か月以上)を定めて、公示催告をなし、事実の調査等をした上で、審判で宣告をすることになります。
また、「事故にあって所在や生死が分からないとき」には認定死亡という制度もあります。認定死亡とは,戸籍法により,水難,火災その他の事変によって死亡した者がある場合に,その取調べをした官庁または公署の報告に基づいて,戸籍に死亡の記載がなされるべきものとされている制度で,これにより死亡が推定されることになります。

今日は、「相続」のカテゴリーの
「相続の開始について」
というブログでした。

最後までお読みいただきありがとうございました。


ごあいさつ

はじめまして。砂川司法書士事務所 代表司法書士の砂川知明です。
砂川司法書士
日本の経済は一部に明るい兆しが見え始めておりますが、それでも厳しい状況が続いております。そのような中、【借金】や【相続】の問題について悩んでいらっしゃる方は多いのではないかと思います。

【借金問題】を解決すること。即ち【債務整理】とは、法律で守られた解決方法の一つです。任意整理、個人再生、自己破産、過払金返還請求など【債務整理】に関する皆さまの疑問について、これまでに800件以上の債務整理実績をもつ司法書士砂川知明がこのブログでお答えいたします。

また、【相続問題】も社会の多様化を反映して複雑化しております。その対応方法、例えば、相続登記、相続放棄、遺言、成年後見などに関する皆さまの疑問についても、できる限り、このブログに記載して参ります。

頼りになるのは身近な法律家です。司法書士「砂川知明」は、常に皆さまに寄り添って、皆さまの問題を解決して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。